メニュー

お馴染み、ドラゴンクエストのオーケストラ曲に乗って灼熱のGRASS STAGEに登場する10-FEET。必殺のエモーショナル・ナンバー“RIVER”をいきなり叩き付けて、フィールドにはもうもうと砂塵が舞い上がる。「さあ、始まったぞー!!」と告げながら、ダミ声のラガマフィン風パートも決めるTAKUMA(Vo./G.)である。歌い終えるなり、“RIVER”の歌詞を指して「この部分はROTTENGRAFFTYがくれた言葉です」と紹介し、この日のSEASIDE STAGE・トリ前に出演する彼らを観てください、とエールを贈っていた。“goes on”に“super stomper”と、序盤からフェス向けのカチ上げナンバーを連発してくれる。「10-FEET、ノリが良く分からん? 速いロック? うるさいロック? ただの音楽なんだ。誰でも出来るー」「え? 後ろの方の人、10-FEETは大人見? じゃあいつ前に来るの? 今でしょうー」とどっかで聞いたことのある予備校講師ふうの煽り文句を投げ掛けるTAKUMAであった。“under the umber shine”に至っては、一度演奏をスタートさせていざコール&レスポンスというところで「まてーい! やめーい!」と強制ストップ。「今日カメラ回ってるからさ、人気出てるような感じでいきたいんよ」と仕切り直しする。わざわざ曲を止めてまでやるか? と思ったけれども、明らかにオーディエンスの歌声がでかくなった。たっぷりとメロディを聴かせる“風”から高速ビートでぶっ飛んでゆく“VIBES BY VIBES”と怪物級ライヴ・アクトたる引き出しを開け放ってゆくと、KOUICHIがオーディエンスに対して「じゃあみんなちょっと座ってみようか」「じゃあ立ってみようか」「まだそんだけ動けるってことは、バテてへんってことやな!」と簡単そうに無茶ぶりする。密集地帯だってあるのに。TAKUMAが申し訳なさそうにしているのがおもしろい。「僕たち36なんですけど、あいつは34ヘクトパスカルぐらいなんですけど、こんぐらいの歳になると、病気とか事故とかで何人か、友達を亡くしたりもして。地元ではよく、酒の席とかで、亡くなったツレのモノマネをして、みんなで思い出しています。そんな事を思いながら書いた曲」と切なさいっぱいのメロディで綴るのは、9/19にリリースが予定されているニュー・アルバムに収録されるという“シガードッグ”だ。悪ノリの直後に、唐突過ぎるだろうか? そうではない。胸が一杯になる事柄のすぐ隣りに笑いがあること。悲しいメロディと一緒に爆音があること。これが10-FEETなのだ。いつでも臨戦態勢で、いつでもシリアスだから笑いと爆音が必要なのだ。シングル曲“その向こうへ”から“1sec.”を更に熱量を増した歌声とサウンドで届けると、最後のナンバー“4REST”ではまたもやTAKUMA、「まてーい!」と演奏&オーディエンスによるシンガロングを遮る。「おもしろいこと考えた。みんな座って。座りながら大きな声出すの、難しいから。俺たちも座ってみる?」とその場にしゃがみ込んで演奏再開だ。ははは、フィールドを俯瞰する映像で観たら「なにこれ?」って感じだろうな。くだらないようなことでも、本気でやってみると以外とおもしろいかも。さすが10-FEETというステージだった。新作が楽しみだ。(小池宏和)