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定刻と同時にSEなしでステージに現れた6人衆――TOSHI-LOW、RONZI、MAKOTO、KOHKIというBRAHMANのメンバーに、パーカッションのKAKUEI、ヴァイオリン&ヴォーカルのMARTINを加えた6人編成から成るOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下OAU)、2年ぶりのロック・イン・ジャパン登場だ。1曲目はインスト・ナンバー“Tinte”。ヴァイオリンとアコースティック・ギターの旋律が柔らかく溶け合う豊潤なアンサンブルが、木々に囲まれたフィールドにすうっと滲み込んでいく。TOSHI-LOWの哀愁漂う歌声が届けられた“gross time~街の灯”の後は、「こんにちは、9mm Parabellum Bulletです」と本日一発目のボケをかますMARTIN。TOSHI-LOWとのユーモラスな掛け合いも飛び出して、笑いとリラックスムードに溢れた幸福のヴァイブスを生み出していく手腕はさすがである。“Ankaa”、“Bamboo leaf boat”、“Freight Train”とライヴ定番曲を畳み掛けた後は、今年で3年目を迎えるバンド主催イベント『New Acoustic Camp』の告知を挟んで、鋭利なカッティング・ギターとMARTINの超絶プレイがハイスピードで交錯する新曲へ。さらに“Thank You”でオーディエンスを飛び跳ねさせると、TOSHI-LOWが故郷・茨城についてこんなことを語った。昨年3月の大震災から1年5ヶ月が過ぎた今でも、舗装されていない道が茨城には数多くあること。そんな中でも農業や漁業を再開させて、復興に向けて力強く立ち上がった友だちが沢山いること。そうして届けられた食べ物が、今日この会場ではふんだんに振舞われているということ――。それに対する感謝の言葉を経て、荘厳なサウンドスケープと歌声が届けられた“夢の跡”は、「あの日」の哀しみを決して風化させんとする強靭な意志と祈りの心に溢れていた。ラストは“Dissonant Melody”でフィニッシュ。聴き手を柔らかく包み込む絶品のオーケストレーションと、その奥に潜む凛とした強さをしっかりと垣間見ることができた、圧巻のアクトだった。(齋藤美穂)