先週末劇場公開された『ウィンターズ・ボーン』。
本年度のアカデミー賞の作品賞にノミネートされた10本のうち、日本公開される最後の作品となるわけだが、このような作品が大々的に評価されることは本当に嬉しいこと。特にその題材を考えると。
CUT7月号の“70年代、映画は狂っていたのか?”特集における『悪魔のいけにえ』と『脱出』の原稿で触れたが、この時代のひとつのコンセプトとして、“田舎=得体が知らない=おっかない”というのがあった。
この『ウィンターズ・ボーン』は長年そうやって恐怖の対象としてステレオタイプされてきたアメリカの田舎生活のリアルを切り取り、貧困とドラッグが蔓延するそんな環境で生きることがいかに大変かが描かれた作品である。
ハリウッドが見せてきたアメリカ像とあまりにも違う、この映画で繰り広げられる荒涼とした世界には驚く人も多いと思う。
とはいえ、この映画の良さはそれが後ろ向きにプレゼンテーションされていることではなく、ちゃんと希望を持って描かれていること。
ケン・ローチやマイク・リーなどイギリスの名手に影響を受けたという監督のデブラ・グラニックの、大味なハリウッドな演出とは掛け離れた淡々とした作風も素晴らしい。
是非、見逃さないで欲しい1本である。
現在発売中のCUT11月号でも、お勧め映画Movie Of The Monthとして監督のロングインタビューをはじめ、6Pにも及ぶ特集を組んでいるので、是非、こちらも目を通して欲しい。(内田亮)
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