ロックとは孤児の音楽である

ロックとは孤児の音楽である

GIRLSのファースト・アルバム、その名も『ALBUM』は、
去っていったガールフレンドに向けた
フロントマン、クリストファー・オウエンスの想いが綴られたものである。
だからその音は、シスコの陽光をいっぱいに浴びながらも、
なけなしの意地っ張りのような哀しさとせつなさに満ちている。
けれど、それだけでは言い尽くせない、
暗い闇のようなものが大きな口を開けているような怖さもまた、このアルバムの凄みを決定づけている。

「恋人もほしいし、ピザも食べたい。ワインも飲みたいし、別荘もいい」
そんな屈託のないウィッシュ・リストを歌う1曲目「Lust For Life」のクリップは、
実にたくさんのガールズたちやゲイ・カップルが、
ほとんどベットルームをロケーションに撮影されたものだ。
誰もが笑い、飛び跳ね、くるくると踊り回る。
しかし、なぜだろう。猛烈に哀しいのだ。
もちろん、彼らのそんなプロフィールはどこにもないのだけれども、
もう圧倒的な現実として、
「ここに登場している彼らは、すでに何かを観てきたし、何かを体験してきた」からだ。
その何かについて、あらためて言う必要はあるだろうか。
それはごくごく普通に、友達から聞く友達の家庭のことであるだろうし、
コミュニティサイトで目にしたりYouTubeで観たりするありとあらゆることだろうし、
実際に親から受ける、さまざまなことであるのだ。
もう40を過ぎたおっさんには計り知れないことが、いまの彼らの現実に、現実として在る。
そのことから目を逸らしたまま、このクリップを観ることはできないのだ。

クリストファー・オウエンスの親は、某カルト教団に入信していたそうである。
彼の兄は肺炎を患った際、病院に連れていってもらえずに、そのせいで亡くなり、
そのことで父親は蒸発してしまったとも聞く。
母親の元で世界各地を転々としていたクリストファーは、16歳で教団を脱走、
紆余曲折を経て今にいたるという。
現在30歳のクリストファーだけど、このアルバムには少しも「大人」の匂いがしない。
むしろ、奪われた思春期を奪い返すかのように、
稚拙さすら握り締めた濃厚な「子供」の願いが渦を巻いている。
「親」が入れないよう、鍵をかけたベッドルームの王国を、
GIRLSはこの2009年に鳴らしているのだ。

そんな彼らの来日が、来年1月に決まった。
日本は、彼にとって教団にいた際、一時期住んでいた土地でもあるらしい。
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