NYの伝説のレコード店、“Other Music”のドキュメンタリーがネットで今日公開。配信してくださる日本のレコード店や劇場を募集中です!

NYの伝説のレコード店、“Other Music”のドキュメンタリーがネットで今日公開。配信してくださる日本のレコード店や劇場を募集中です! - pic by Robert M. Nielsenpic by Robert M. Nielsen

今週末は本来だったらレコード・ストア・デイだったので、2016年に閉店したNYの伝説のレコード店「Other Music」のドキュメンタリー映画が劇場公開されるはずだった。レコード・ストア・デイは6月20日に延期されたが、映画のバーチャル公開は予定通りの4月17日に行なわれる。映画にはヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグから小山田圭吾、なんと店の常連だったというベニチオ・デル・トロまで登場しコメントしている。予告編はこちら。


以下のウェブサイトにあるレコード店や劇場のウェブサイトからレンタルすると、リンクがメールで送られてきて来て、そこから72時間以内だったら映画が観られるというシステム。しかも、映画の売り上げの50%はその店に支払われる。

http://www.factorytwentyfive.com/other-music/

日本のみなさんも上記のサイトのどの店からでもレンタルできるのだが、日本の観客へ配信してくださる日本のレコード屋さんや劇場を探している。もし興味があったら以下に連絡してくださいとのこと。

matt@factory25.com

すでに映画を観たのだけど、ちょうどコーチェラの20周年のドキュメンタリーも公開されたタイミングで、もうひとつのアメリカの音楽シーン、とりわけNYのインディ・シーンにとって重要な役割を果たしたレコード店のドキュメンタリーが公開されるというのは、興味深いと思った。しかもコーチェラも「Other Music」もアメリカの音楽シーンに大きく影響を与えたと言えるけど、その結末がかなり違う。

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「Other Music」は、アニマル・コレクティブのメンバーが働いていた店でもあり、2000年代のアメリカインディ・シーンに多大なる影響を与えた店だ。ヴァンパイア・ウィークエンドはアルバムを発売する前にこの店のウェブサイトから初めて作品を発表した。ヤー・ヤー・ヤーズザ・ストロークスTVオン・ザ・レディオザ・ナショナルなどNYシーンが盛り上がっていく過程で、この店でインストアライブが開催されたりと、大きな役割を果たすのみならず、それ以前に、例えばベル・アンド・セバスチャンの『天使のため息』やセルジュ・ゲンスブールの作品など、輸入盤としてもどこでも販売されておらず、「Other Music」でしか買えない作品などがあった。当時の若者の音楽の聴き方に大きく影響を与えたのだ。

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また、1996年にニュートラル・ミルク・ホテルがインストアライブをしている超貴重な映像も観られる。メディアに出る事を嫌うジェフ・マンガムだが、「Other Music」が大好きで彼自身も常連だったので、即使用を許可してくれたという。

私も週一で行っていたが、店に入ってすぐに新譜の棚があり、そこを見るのがいつも怖かった。店員さんの手書きのコメントがあり、そこに飾られているCDを持ってなかった日には、絶対買わなくちゃいけない気分になったからだ。もちろんそれを全部買っていたらお金がなくなってしまう。

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このドキュメンタリーを観るまで知らなくて、なるほどと思ったのは、NYのアングラシーンにとっては欠かせない「キムズビデオ」というレコード、ビデオ店があったのだが、そこで働いていた人達が独立してできた店だったということ。なるほど、納得した。「キムズビデオ」は、よりハードコア、アングラ、パンクロックという感じの品揃えだったのだけど、今考えてみれば、それに比べると「Other Music」はよりクールなヒップスター的存在だったと思うのだ。映画の中でも、どこかスノッブに感じて、中に入る時どきどきすると言うコメントをしている人達が多くいた。確かにそういうところがあった。

この店が閉店する映像はさすがに涙が出てしまうが、この映画は、NY音楽シーンとどのようにこの店が関わったのかを描いているのみならず、この店の閉店によって、これまでアングラカルチャーを配信していたはずのNYのイーストビレッジが終わってしまったことを象徴しているように思った。家賃が高騰し、若者の文化がブルックリンに移動してしまったからだ。さらに、1996年から2007年までは、インディ・ミュージックの隆盛もあるが、その後のネット文化により、良くも悪くも音楽の聴き方、音楽との関わり方が激変した時期でもあった。この映画はそれを凝縮してドキュメントしているとも思った。

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監督は、今の若者がネットでどんな音楽でも聴けるようになったことは素晴らしいと思うが、何かしらの形で人とのコミュニケーションを持つというのがいかに大事なのかを知って欲しいと言っていた。さらに監督は、これを誰かが記録に残さなくてはいけないと思ったとも語っていた。その思いも伝わってくる作品だし、実際ネットの記事で読む以上に意味のある場所だったと思う。映画にしてくれて良かった。

同時に「Other Music」から5分くらいの場所にあった、それこそ伝説の「CBGB」が閉店した際に、パティ・スミスが言っていたことも思い出した。「その場所が閉まってしまっても、若者は絶対また別の場所で新しい何かを始めているはずだから」と。

自分でも笑ったのが、映画の中で店員さんが自分の知らなかったアーティストを紹介している場面を見て、さっそくストリーミングサービスで探してお気に入りに入れていたこと。

1995年にオープンし、2016年に閉店した「Other Music」で一番売れたアルバムのベスト20位は以下の通りだ。

1. Bell & Sebastian『If You're Feeling Sinister』
2. Air『Moon Safari』
3. Boards of Canada 『Music Has the Right to Children』
4. Kruder & Dorfmeister『The K&D sessions』
5. Yo La Tengo『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』
6. Os Mutantes『Os Mutantes』
7. Neutral Milk Hotel『In the Aeroplane Over the Sea』
8. Sigur Ros『Agaetis Byrjun』
9. Arcade Fire『Funeral』
10. Magnetic Field『69 Love Songs』
11. Bell & Sebastian『The Boy with the Arab Strap』
12. Cat Power『Moon Pix』
13. The Strokes『Is This It』
14. Yo La Tengo『I Can Hear the Heart Beating as One』
15. Talvin Singh『Anokha』
16. Joanna Newsom『The Milk-Eyed Mender』
17. Interpol『Turn on the Bright Lights』
18. Cat Power『Covers』
19. Cornelius『Fantasma』
20. Serge Gainsbourg『Comic Strip』
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