ジャパニーズ・ブレックファストが書いた母の回想録が映画化へ。カレンOやミツキの助けで人生が変わった話など、7月号に入り切らなかった話をご紹介。

ジャパニーズ・ブレックファストが書いた母の回想録が映画化へ。カレンOやミツキの助けで人生が変わった話など、7月号に入り切らなかった話をご紹介。 - pic by PETER ASH LEEpic by PETER ASH LEE

『ロッキング・オン』7月号にインタビューを掲載したジャパニーズ・ブレックファスト。今日で雑誌は店頭から消えてしまうので、ぜひチェックしてみてください。

彼女は今年、キャリアでも最も忙しく、最高と言える年を迎えていると言って過言ではない。

1)ベストセラーとなった回想録の映画化

彼女ががんで亡くなった母との思い出を中心に、韓国料理や、韓国人の母とアメリカ人の父の間で生まれたこと、フィラデルフィアのインディ・シーンで活動を開始すること、自立することなどが描かれた回想録『Crying in H Mart』が、何とニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストの2位となった。

本当に感動的な作品で私も目に涙を溜めながら一気読みしてしまった。少し前だが、これが映画化されると発表された。おめでとうございます!

Orion Pictureが映画化することになり、彼女も脚本を共同で書く他、音楽も担当する。


2)TVゲーム『Sable』のサントラも担当。

TVゲーム『Sable』のサントラも手掛けていて、その予告編が公開された。XBOXを持っている人は、彼女のサントラが9月23日にすべて聴けるそう。


3)ウィルコジェフ・トゥイーディーがジャパニーズ・ブレックファストの新曲をカバー。


ロッキング・オン7月号に掲載したインタビューの中で、『ジュビリー』は自分の3作目に当たり、彼女が好きなアーティストであるビョークが『ホモジェニック』、ウィルコが『サマーティース』、フィオナ・アップルが『エクストラオーディナリー・マシーン』、ビーチ・ハウスが『ティーン・ドリーム』を作り、アーティストを定義する作品を作っているので、「自分もそう言う作品にしたい」と語っていた。

ウィルコは彼女に最も大きな影響を与えたアーティストなので、彼が彼女の新曲をカバーしてくれて相当嬉しかったはずだ。「魂が自分の体から離脱したと思う」とツイートしていた。

4)アジア系アメリカ人として生きることについて。ミツキやカレンOが自分の人生を変えたことについて。

これは、7月号に入り切らなかった部分なんだけど良い話だなあと思ったので紹介したい。

まずミツキについて。彼女は、ミツキのツアーの前座を務めている。

「ミツキは、私のキャリアを全て変えた人。彼女の前座としてのツアーが私の生まれて初めてのツアーだったから。あの当時彼女は、アジア系アメリカ人としてインディ・ロック・シーンで、ナンバー1という存在だった。だから彼女は、自分がそのタイトルを独り占めし続けるべきだと思ったって良かったわけ。でもその代わりに、自分の初めてのヘッドライン・ツアーで、ジャパニーズ・ブレックファストとJay Somという2人のアジア系アメリカ人女性とツアーすると決めたわけよ。彼女がツアーの前座にしてくれなかったら、私の今のキャリアはなかったと思う。彼女は、私の人生を全て変えてくれたの。本当に感謝している。

だからこれから私がツアーする時には、白人男性以外の人と一緒にツアーしたいと思うようになった(笑)。実際9月から、Luna Leeとツアーすることになっている。それが大事だと思う。今インディ・ミュージシャンの中に、素晴らしいアジア系アメリカ人のコミュニティがあるように思うし。SasamiやLong Beard、Jay Som、Luna Lee、Yaejiって素晴らしい女性たちがいっぱいいる。みんな、孤独に感じることもあったかもしれない。または、ブッキングされた時に、私がダイバーシティ的役割を担っているのね、って思ったことがあるかもしれない。でも、そう思う代わりに、みんなでコミュニティを作って、助け合えばいいと思う。小さいことでもいいと思うの。そういうことがあるって素晴らしい。そんな体験ができるとは思ってもみなかったから最高の気分」


かつて、または最近でも?自分と似たようなアーティストが出てくるとみんなその人たちを潰そうと必死のスターが多い中、最近のテイラー・スウィフトとオリヴァア・ロドリゴしかり、女性アーティスト同志が結託するのは時代の流れかなあと思う。団結してそれより大きな敵と戦わないといけないと思っているのだと思う。

カレンOも彼女の人生を変えたヒーローだ。

「カレンOは、私が公で初めて見たアジア系アメリカ人だった。音楽シーンってだけじゃなくて、アジア系アメリカ人で公に出てる人って本当に限られているから。もちろんミシェル・クワンがオリンピックに出場したのは覚えているけど、でも、自分以外のアジア系アメリカ人を見るだけでものすごく嬉しかった(笑)。それくらい稀だったと思う。彼女には、一度も直接会ったことはないんだけど、でも最近話をする機会があって、私にとっては、例えばオバマに会うくらい究極のこと。最大のアイコンに会うようなものだった。

でもよく『絶対自分のヒーローには会わない方がいい』って言うでしょ。ガッカリするから。でも、正直言って、私たちの会話は完璧で、彼女は完璧で、だからものすごく感動したし、本当に彼女には感謝している。いつか本当に会ってみたいと思う。アジア系アメリカ人って、超女性的で従順というステレオタイプがあるけど、彼女は、それを全て打ち壊してくれた。彼女を見たおかげで私の人生が全て変わったの」


私もカレンOにインタビューしたことがあるけど、後にも先にもあんなクールな女性に会ったことがない。

彼女がここで言っているのは、インタビュー・マガジンの対談だと思う。リモートで行われているので、対面はしていない。


5)お母さんが亡くなった上に犬まで死んだことを歌った史上最も悲しい曲“In Hell"について。

これも7月号に入らなかった部分なんだけど、最新作には彼女が書いた史上最も悲しい曲がある。


●“In Hell”はあなたの犬についてというのは本当ですか? 「私の運命のせいであなたは1年以内に死ぬ」と歌うのは、あまりに悲しい歌詞ですが。

「(笑)。うん、本当にそう。この曲はたぶん私が書いた最も悲しい曲だと思う。それは私の犬を安楽死させなくちゃいけなかったことを歌っていて、犬を安楽死させるって、注射を一度打つってことなんだけど、ものすごい速さだし、それに、私にそれを決めてコントロールする力がある。私が決定しなくちゃいけない。母が亡くなる時に、私たちは母が痛みを感じないように薬をあげ続けなくてはいけなかったんだけど、自分が人の命を手にするってものすごい責任だし、そういう経験がある人ってそんなに多くもないように思う。

母が亡くなった後、自分に何か悪いことが起きる度に『え、まじでこんなことまで起きるの?!』と思っていたの。しかも、犬がお母さんが亡くなった1年後に死んだの。悪いことが全て重なっていくように思えた。だからここで『私の運命のせいで、1年以内に死ぬ』と歌っているのは、ここまできたら、なんだって起こり得ると思えたからだった。明日は、夫が死ぬことだってあり得ると思えたしね。私のこの運命のせいで、最悪なことはもう起きてしまったんだし、何も失うものがなくなるところまでいくかもしれないってね。そんなことを考えながらこの曲を書いた」


6)最後に、彼女は今年アルバムを出し、ベストセラー本を書き、TVゲームの音楽を手掛け、実はTVドラマにも出演し、MVも監督し、多岐に渡って大活躍している。それでも音楽が一番なのかについて訊いた。

「それは良い質問ね。音楽とは最も長い付き合いだということ。最も心地良いし、自分はミュージシャンだと思っている。だけど同時にミュージシャンとしてのキャリアのおかげで様々な機会を得ているから、その機会を最大限に活かしたい。ミュージシャンとしてビデオの予算があるってだけでも、どの監督も与えられることではないと思うからね。それに私は、音楽で成功できなくて当たり前だと思っている。

でも、私の履歴書に色々と書くことがあったら、音楽がダメだった時に、他の人のビデオを監督したり、エッセーを書いたりできる、必ず仕事から溢れないって思えると思うの(笑)。音楽で成功しなかった人たちをたくさん見すぎているからだと思う。今の私には履歴書に書けることがたくさんある(笑)」


彼女の最近のライブ映像はこちら。


最新作は、今年前半のベスト・アルバム・リストに選ばれているし、批評家のレビューを集計したサイトによると、現時点では総合で8位に入っている。

https://www.albumoftheyear.org/ratings/6-highest-rated/2021/1



ジャパニーズ・ブレックファストのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ジャパニーズ・ブレックファストが書いた母の回想録が映画化へ。カレンOやミツキの助けで人生が変わった話など、7月号に入り切らなかった話をご紹介。 - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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