「史上最悪のオスカー」。

「史上最悪のオスカー」。

By ピーター・トラバース/ローリング・ストーン誌。


イタたっ。全般的に非常に評判の悪かった昨日のオスカー。視聴率も7%下がったようです。


伝統的ハリウッドとクールでヒップなハリウッド(そんなものがあるなら)をなんとかミックスしようと、アン・ハサウェイと、ジェームス・フランコという若手俳優しかも男女ペアが司会をした前代未聞の昨日のオスカーでしたが、内容的にはかなり無理が。


例えば、『英国王のスピーチ』と、『ソーシャル・ネットワーク』という、ハリウッドの伝統対新風という作品賞の対決においても、結局『英国王』に軍配が上がったように、根底が若くないところに、若者カルチャーを無理矢理挿入しようとしても、上手くいってないのがバレバレ。おかげでかなりとっ散らかった内容に。


アン・ハサウェイとジェームス・フランコは、ふたりがやるべきことをやろうとしていたと思うのだけど、脚本と演出が破綻してて、何コレ?という意味の分からない箇所が多数。例えば、いきなり『ハリー・ポッター』などがオートチューンで紹介されても?あれ今だに何がしたかったのかまったくわからない……。


さらに最悪なことに、ビリー・クリスタルが出て来ちゃって、間違いなくあそこで全員「あ〜あ、この人が司会だったらどんなに良かったのに」と思ったはず。


酷い箇所だらけで、そういう意味では記憶に残るオスカーに。来年は、もうとにかく王道に普通にやるんだろうなあ。司会はビリー・クリスタルで(笑)。


個人的には、一夜明けても忘れられないのが、オリジナル脚本賞で受賞者の名前(『英国王』)が呼ばれた瞬間のクリストファー・ノーランの顔が本当に悲しそうだったこと(涙)。


それとデヴィッド・フィンチャーが顔が映る度にふてくされていて唇を触っていたこと。前回のオスカーでは、いつも、口をぼかーんと開けていたので進歩でしたが(笑)。しかしニコリともしないので、この放送中に果たしてフィンチャーが笑う瞬間があるか?とツイッターで書いていた、映画ブロガーもいたほど。だからオスカー獲れないのかなあ(笑)。彼の映画で、最後にマーク・ザッカーバーグが、弁護士のアシスタントに「あなたは裁判したら最初の10分で負けるわ」と言われたように、LIKABILITY(好感度)に欠けている(笑)。


まあ、分かってはいたけど……。でも、『市民ケーン』も獲らなかったし。キューブリックはオスカーもらっているけど特殊効果としてだし。スコセッシが初のオスカーもらったのはたった5年前で、63歳の時だし……。


そう言えば、カットに掲載したインタビューでも言っていたけど、20歳くらいの時にCMを作り始めて、それは既存のCMとまったく違うものだったんだけど、自分のルールは絶対に変えないで、「例えばペプシがお願いだから、CMを撮ってください、とそれでも自分に頼みにくるまでは、絶対に自分からお願いに行ったりしない。冗談じゃねー」くらいのことを言っていたので、「お願いだからオスカーもらってください」、と言われるくらいの作品をどうか作ってオスカーの概念を是非変えてやってください。


というわけで、トレント・レズナーとアティカス・ロスが周囲の予想に反して、もらうべき人がもらえたことがせめてもの救い。読者の方からも「あのトレント・レズナーが今こうしてオスカーをもらってると思うとなんか感慨深い」と連絡をいただきましが、本当に。最有力候補だったハンス・ジマー(『英国王』)もトレントに、「君に獲って欲しい」と言ったそうです。優しい!彼はもうもらってるしね。ちなみに、『英国王』も、良い作品ですので、是非観てください。


言いたい事はまだまだありますが、これから発売のカットで、LA小西君と再び対談する予定ですので、どうぞよろしく!
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