ウィロー、ヒップホップとR&Bに囲まれたZ世代が、なぜ「ポップ・パンク」で叫ぶのか? 新しい時代のメッセージを読み解け!

ウィロー、ヒップホップとR&Bに囲まれたZ世代が、なぜ「ポップ・パンク」で叫ぶのか? 新しい時代のメッセージを読み解け! - rockin'on 2021年11月号 中面rockin'on 2021年11月号 中面

文=粉川しの

もしも瀕死のUSロック・シーンに救世主が現れるとしたら、それはポップ・パンクの顔をしているのではないか……そんな言説が囁かれ始めたのは、2010年代末期のことだったと記憶している。ロックが低迷の底を這っていた当時のアメリカで微かな存在感を示していたのがフュエルド・バイ・ラーメンに代表されるポップ・パンク、エモ・シーンで、同時にパラモアパニック!アット・ザ・ディスコのような同レーベルのバンドに影響を受けた新人が、登場し始めていたのがテン年代末期の風景だったのだ。

2020年にはマシン・ガン・ケリー初のポップ・パンク・アルバム『ティケッツ・トゥ・マイ・ダウンフォール』が全米1位を獲得。ビリー・アイリッシュアヴリル・ラヴィーンやパラモアへのリスペクトを公言したのもこの頃の話だった。

そんなムードがさらに顕在化し、ムーブメントと呼ぶべき形状を成したのがこの2021年だ。英米の音楽専門サイトから一般カルチャー誌
までこぞってネオ・ポップ・パンク、ポップ・パンク・リバイバルの特集を組み、「Z世代が再びギター・ミュージックに夢中になっている」と報じ始めた。

そうしたニュースの中心にいたのが、もちろんオリヴィア・ロドリゴだ。今年最大のヒット・アルバムになりそうな彼女の『サワー』はテイラー・スウィフトの系譜に連なるSSW系ポップ・アルバムであり、同時に“グッド・フォー・ユー”がパラモアの“ミザリー・ビジネス”と酷似していると世間を騒がせたように(結局パラモア側が同曲のコライト・クレジットを獲得して手打ちとなった)、明らかなポップ・パンク・アルバムでもあった。

また、ビリー・アイリッシュの最新作『ハピアー・ザン・エヴァー』のタイトル・トラックが、思いっきりギターが歪み軋むパンク・チューンとなったのも、ビリー自身による伏線の回収だったと言ってもいいかもしれない。

オルタナの細分化や複雑化によってではなく、どこまでも分かりやすいポップ・パンクの再流行によってギター・ミュージックが復活した意義は、ロックを再び音楽体験の入り口とする若い世代が出てきたこと、ロックが再びユース・カルチャーとしての役割を果たし始めたことだろう。そして、そんな時代性の象徴と呼ぶべきアーティストが、ウィローだ。彼女の“t r a n s p a r e n t s o u l feat.Travis Barker”を聴いて、勇ましくもナイーブで、喧しくもピュアな思春期そのものが震え弾ける様にノックアウトされたのは私だけではないはず。(以下、本誌記事に続く)



ウィローの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ウィロー、ヒップホップとR&Bに囲まれたZ世代が、なぜ「ポップ・パンク」で叫ぶのか? 新しい時代のメッセージを読み解け! - rockin'on 2021年11月号 右:表紙/左:表2rockin'on 2021年11月号 右:表紙/左:表2

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