今年デビュー40周年の節目を迎えるデュラン・デュランが、約6 年ぶりとなるニュー・アルバム『フューチャー・パスト』をリリースする。過去と未来を繋いだアルバム・タイトルにも象徴的なように、本作はデュラン・デュランらしいサウンドを2020年代バージョンとしてアップデートしたものになっている。
前作から引き続きのマーク・ロンソンに加え、ジョルジオ・モロダー、エロル・アルカンという新旧ディスコ・ポップのブレーンが集結し、70sディスコのグルーヴから、再び波が来ているゴスやインダストリアルを巧みに取り入れた同時代感、ヴェイパーでキッチュな今様シンセ・チューンまで、デュラン・デュランのポップの可変性と耐久性を次々に証明していく。
その一方には“インヴィジブル”のようにヘヴィ・リフ(弾いているのはグレアム・コクソン!)が唸るファンキーなロック・チューンもあるが、これも懐かしの“ザ・ワイルド・ボーイズ”から脈々と続く彼らの個性の最新形ということだろう。“モア・ジョイ!”では日本からCHAIが参加、彼女たちの弾けるコーラスに負けない御年63歳のサイモン・ル・ボンのチャラい、もとい若々しいボイスは驚異的だし、風格に絡みとられないその軽やかさは一周回ってラディカルですらある。
アルバムの最後を締めくくるのは、デヴィッド・ボウイのキーボーディストとして知られるマイク・ガーソンをフィーチャーした“フォーリング”。デュラン・デュランにとってボウイが原点のアーティストであることを思えば、まさに「フューチャー→パスト」な完璧なフィナーレだ。
一時期の低迷を跳ね返し、80sリバイバルの中で再評価され、現役感を漲らせるに至ったのが近年の彼らだが、そもそもデュラン・デュランはベテランとしての成熟や定着よりも、常にポップ・アーティストとしての気まぐれや流動性と共に時代の前線を目指し続けてきたバンドだ。そういう意味でも、『フューチャー・パスト』は「40年」を重荷として感じさせないポップ・アルバムに仕上がっているのが何より最高だし、つくづくデュラン・デュランらしい40周年になったと思うのだ。 (粉川しの)
デュラン・デュランの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。