先日、とある海外のプレイリストを流し聴きしていたところ、《アイウエオ、カキクケコ、サシスセソ……ヤバイ、チョーカッコイインダケド!》とキャッチー極まりない日本語が聞こえてきた。しかもそれが日本のボカロソングを思わせるメロディと、今風R&Bのエアリーなフロウ、変態的にポリリズミックな速弾きギターという、およそ相容れない3要素がトリッキーに絡まり合ったトラックに当たり前のように乗っかっているのだ。何事かと思ったが、それがポリフィアの新曲“ABC”だとわかって妙に納得してしまった。確かにポリフィアならやるだろうと。
ポリフィアは2010年にテキサス州プレイノで結成された4人組。“ABC”が収録されたニューアルバム『Remember That You Will Die』は、彼らにとって4年ぶりの4作目となる。これまでにトータル3億回以上ストリーミングされるなど異色のインストバンドとして名を馳せてきた彼らは、インストゆえに当然バカテク。
しかしポリフィアの異色さの肝はメタルやハードロックの技巧性に加えてポストロックの脱構築性、さらには最新ポップエレメンツとしてのヒップホップやR&Bまで巧みに取り込んだ、クロスオーバーのセンスにこそある。前作『New Levels New Devils』(2018年)ではトレンドのど真ん中を捉え、トラップビートを搭載したヘヴィギターチューンも話題を呼んだ。
『Remember That You Will Die』はそんな彼らのクロスオーバー性をさらに加速させたアルバムだと言えるだろう。特に“ABC”のSophia Blackや、デフトーンズのチノ・モレノ、ラッパーのKillstationや$notをゲストに迎えたボーカルナンバーの数々は、インストバンドであるポリフィアのオルタナティブな可能性をさらに押し拡げるものになっている。
その一方で、スティーヴ・ヴァイをゲストに迎えた“EgoDeath”はインストバンドとしての高みをさらに目指した圧巻のナンバーだ。ヴァイの代名詞でもある速弾きをポリフィアの2 人のギタリストがオマージュのように弾ききった後、御大が満を持して登場しドラマティックに弾きまくるという構成も完璧! ドーパミンとアドレナリンが交互に押し寄せるようなリスニング体験なのだ。 (粉川しの)
ポリフィアの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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