彼女を語る時、「ラヴ・モア」がボン・イヴェールによってライブでカヴァーされ、サード・アルバムがザ・ナショナルのアーロン・デスナーにプロデュースされ、といったストーリーが常について回る。
それは彼女を成功に導いた幸福な出会いであるが、同時に彼女にとって一種の束縛にもなっていく。彼女自身ではなく、回りの物語ばかりが注目されてしまう事態になってしまったのだ。
今回のアルバム「アー・ウィー・ゼア」は完全なセルフ・プロデュース作。
「人は私を一発屋って呼ぶけど、もしも私が二発目を当てたらどうなるのかしら?あなたのお皿を洗った後で、お宅のトイレで大きい方をしておいたわ」という歌詞には笑ったが、彼女の決して他人の名前で評価される自分ではないという覚悟が伝わって来る歌詞でもある。
「アフレイド・オブ・ナッシング」というアルバム1曲目が好きだ。自分に対し何にも怖れないものになれと呼び掛けるナンバー。
今週のワールド・ロック・ナウで紹介したい。「アフレイド・オブ・ナッシング」もかけたい。
ジャケットの写真は、彼女が地元の専門学校で写真を勉強していた時、初めて自分で現像したものらしい。映っているのは当時の友人のレベッカ。とてもいい写真だと思う。
まさに自分と自分の才能と作品に向き合ったアルバムだ。