日経ライブレポート 「ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライングバーズ」

有名バンドを離れソロになると、自分が過去に所属したバンドの曲を演奏したがらないアーティストが多い。やはり新しい自分の物語をスタートさせる時は、来たお客さんには昔の曲より新しい曲を聴いてもらいたいからだろう。

しかしオアシスを解散し、ソロをスタートさせたノエル・ギャラガーは積極的にオアシス・ナンバーをステージで演奏した。ソロを始めた当初は新しい曲が少ないということもあって、演奏される曲の3分の1近くがオアシス・ナンバーだった。オアシスのメンバーだった弟に「オアシスの曲をやりすぎ」と言われたくらいである。逆説的な言い方ととらえられるかもしれないが、だからこそノエル・ギャラガーはソロとして成功したのだと思う。
 
ノエルのソロ・デビュー作は全世界で好調なセールスを記録し、内容的にも高い評価を得た。サウンドはオアシスとはかなり違う、アメリカン・ルーツ・ミュージックの強い影響を感じさせるものだ。つまりオアシス色は薄い作品だった。にもかかわらずオアシス・ファンからも熱く支持された。それはオアシスと違うものを作ろうとしてそうなったのではなく、ソロとしての音を健全に追求していった結果だということがファンにしっかりと伝わってきたからだ。

この日もオアシス・ナンバーは演奏された。しかも本編ラストとアンコール・ラストの最も重要なところで歌われた。先日発表された彼の2作目のソロも本国英国で初登場1位と大成功している。オアシスを大切にしつつもオアシスから自由である、そんな彼の姿勢が生んだソロ・アーティストとしての勝利感あふれるステージだった。

15日、日本武道館。
(2015年4月28日 日本経済新聞夕刊掲載)
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