日経ライブレポート「ミツキ」

彼女の最新アルバム「ビー・ザ・カウボーイ」は、米国の多くのメディアで2018年のベストアルバムに選ばれた。もともと評価の高かったアーティストだが、最新作は現在のロックシーンを代表する女性アーティストとしての彼女の地位を決定的なものとした。

日本生まれで、日本人と米国人とのハーフの女性シンガー・ソングライター。自身の弾くノイジーなギターサウンドを核とするオルタナティヴなロックを基本としていたが、最新作ではそこから離れ、歌を中心とするよりトータルな音楽性で聴かせる独自の表現世界を築き上げた。

今回のライヴはその世界観を反映したもので、トレードマークであるギターをほとんど弾かず、歌に専念した。アルバムの評価の高さが証明しているように、彼女の新しい表現スタイルは素晴らしく、これまでの彼女の音楽をより純化して進化させたものとなった。

「ただいま」という挨拶から始まった、いつも通りの親しみやすい日本語のMCやインディー感あふれるバンドのたたずまいなど、世間の評価は世界のトップアーティストになっても彼女の自然な姿勢は変わらない。

ただ表現される世界は大きくスケールを広げ、深みを増した。メロディーはこれまで以上に洗練され多彩になった。それがよりポップなものとして聞き手に届く直接性を獲得したことが驚きだ。シンプルな楽器構成で表現されるのだが、その緻密なアンサンブルで凄まじく奥行きを感じさせる音世界が作り上げられていく。日本の舞踏を思わせるパフォーマンスも印象的だ。彼女が新しいステージに立ったことが強く伝わる感動的なライヴだった。
2月12日、渋谷WWWX

(2019年2月26日 日本経済新聞夕刊掲載)
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