もう憶えている人も少ないと思うが、僕はボブ・ウエルチ担当の音楽評論家だった。
とても好きなアーティストで、いくつかの作品のライナーも書かせてもらっている。
フリートウッド・マック時代からソロまで、いつも仮住居な感じがついて回った不思議な人だった。
僕はフリートウッド・マック脱退後に彼が結成したパリスというハードエッジなバンドが大好きで良く聞いていた。
ハードロックといっていいスタイルで、僕は紛れもないハードロックとして聞いていたが、ボブ・ウエルチ自身はそんなつもりはなかったようだ。たまたまそんなスタイルに仮住居しているだけだった。
それはメンバーが抜けてしまい、一人でバンドのサード・アルバムとして作っていた作品を結局ソロ第一作として出し、それが200万枚のヒットになった、誰が聞いてもポップで聞きやすい「フレンチ・キッス」だった事からも分かるだろう。
そこから暫く彼の黄金時代が続くが、それでも仮住居な感じは抜けなかった。
意図せざる作品でキャリアのピークを築いた彼は、そのイメージを守りつつも地道に自分独自の世界を構築し優れた作品を発表していった。
しかし人気は徐々に下降していってしまった。
ヘロイン中毒で入院のニュースは辛いものがあった。
銃で自殺は余りに衝撃的で、詳細を知ろうにも情報が入って来ない。
だから未だに彼の死が自分の中に収まらない。
今日は一日、どんな追悼文を書いたらいいのか考えていた。
自分の誕生日が、そうやって過ぎていくのに不思議な感慨を覚えた。
僕の中でアル・クーパーとボブ・ウエルチはイメージがダブる。
何故か僕はこうしたアーティストを好きになる。
結局、気の効いた追悼文は書けなかった。
これからフェリーニの「道」を何十年かぶりに見ようと思う。
昨日、エレカシの宮本くんにインタビューした時、この「道」の話になり、急に見たくなったのだ。
ボブ・ウエルチ、享年66歳。
ボブ・ウエルチ、亡くなる
2012.06.09 21:33