日経ライブレポート「ザ・デュークス・オブ・セプテンバー・リズム・レヴュー」

1970年代から80年代にかけて、それぞれがポップ・ミュージックのトップに君臨したキャリアを持つ偉大なミュージシャン3人、ドナルド・フェイゲン、ボズ・スキャッグス、マイケル・マクドナルドが一堂に会してステージに立つザ・デュークス・オブ・セプテンバー・リズム・レヴューを観た。3人のオリジナル曲と共に、全員にとっての音楽的ルーツとなるブルースやソウルの名曲をカバーする構成である。

アメリカ本国でも好評だったツアーだ。スティーリー・ダンのツアー・ミュージシャンを主体とするバンドが素晴らしい。従ってバンドリーダーはドナルド・フェイゲンで、彼のバンドに他の2人が招かれている感じである。一曲目がジェイムス・ブラウンのカバーでラストがスライ・ストーンのカバーという構成からも分かるように、3人のヒット曲を聴かせるというよりは3人が愛するブルースやソウルを3人のグルーヴで演奏し、お客さんと一緒に楽しもうというのがこのライヴのコンセプトである。

しかし聴く側としては、それは分かっているがヒット曲も聴きたいというのが本音でもある。無論それぞれの代表曲は2、3曲歌ってくれる。しかしバック・コーラスの女性シンガーのリード・ヴォーカル曲を2曲聴いていると、いくらそれが素晴らしくてもどこか萎えてくる自分がいるのは否定しきれない。武道館ではなくホールでのライヴだったら、もっとより親密な本来のコンセプトに則った雰囲気が出たかもしれない。

1日、日本武道館
(2012年11月21日 日本経済新聞夕刊掲載)
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