レディオヘッドが今のシーンにおいて最も重要なバンドという地位を得てから、どれくらいになるのだろう。マドンナが「全てのバンドのヴォーカリストは、皆トム・ヨーク(レディオヘッドのヴォーカリスト)になりたがっている」と発言したのも、もう何年も前の事だ。にもかかわらず、いまだに彼らはそのポジションを守り続け、高い評価と人気を誇っている。本人達には、その地位を守る意志はなく、むしろそこから逃げたがっているようだ。難解な作品を発表したり、目立った活動をしない時期が長かったり、そうしたポジションに居るプレッシャーから遠ざかり、健全な創作活動を維持する為に、いろいろと試行錯誤しているように、僕には見えた。しかし、ここ数年はそうしたポジションを引き受け、無理なく活動を続けていける状態になったようだ。今回のライヴに限らず、彼らのコンサートを観る度に思うのは、非常に肉体的なパフォーマンスだな、という事。いろいろな誤解を招く強引な表現だが、まるでローリング・ストーンズのようであった。ストーンズが古典的なロック・グルーヴの強固なスタイルを作りあげたとするなら、レディオヘッドは限りなくモダンなロック・グルーヴの新発明とも言えるスタイルを作りあげたのである。イメージとしてはそれは緻密なアレンジと、微妙なアンサンブルから生まれて来るもののように考えられるが、実際はアコースティック・ギターの弾き語りでも十分生まれるとても肉体的なものなのだ。それに自覚的になり、自信を持った事によりバンドは自由に、そして今のポジションをエンジョイできるようになったのだ。2008年10月7日 東京国際フォーラム
(2008年10月15日 日本経済新聞夕刊掲載)
日経ライブレポート「レディオヘッド」
2008.10.19 15:00