サンプラザの最終日を観た。
「最終日だから盛り上がると思っているかも知れないけど、意外と普通です(笑)」という民生の言葉通り、本編においては特別なことはなかったが、アンコールでオープニング・アクトの住岡梨奈と共に“夕陽ヶ丘のサンセット”をやったりして、結果的にいつもより長いライブになったので、やはりMCを含め最終日モードだったのかもしれない。
新作が発表されたが、今回のツアーはそれに対応したものではなく、これまでの曲のなかからバンドのグルーヴが生きるロック・ナンバー主体に演奏される(と僕は思った)ツアーだった。
それだからこそロックな民生のポテンシャルが際立った、とても聞き応えのあるライブだった。
昔、僕は「ロックは最初の一発で決まる」という原稿を書いたことがある。
ロックは最初の一音が鳴った瞬間に、全てが分かる音楽なのだ、ということが言いたかった。
ギターの最初の一音、ドラムの最初の一発、それだけでそれがリアルなロックだと感じられる、そういうことが言いたかった。奥田民生はまさに、そうしたロックを鳴らすアーティストだ。
そしてこのバンドこそ、その民生のロック・グルーヴを完璧に肉体化したものだ。
アンコールで「マシマロ」のダブ・バージョンが演奏された。
本来なら機械的に処理されるダブ・エコーを自分でやってしまうという民生ならではの笑えるダブだったが、これが最高だった。
半端な技術やセンスでは形にならないものを見事にやってみせた。
笑いながらロックの思い切りディープなグルーヴを聞き手に体験させる最高のパフォーマンスだった。
民生らしい「ロックは最初の一発で決まる」パフォーマンスだった。
カウントダウンのステージが楽しみだ。
写真は最新作のリミテッド・エディション。無論、こちらも最高。