キャータンが抜けてしまったにも関らず、ホーンや弦を導入してこれまでを超えるスケール感だった。
新作「Kveikur」で久々に噴出したヘヴィでアグレッシブな面も見せながら、代表的な曲(というか個人的に期待していた曲)はほぼやってくれて、ヨンシーも何度も観客を煽るほどハイテンションだった。
すべてが素晴らしかった。
僕はシガーロスのライヴを見るのはこれで6回目だ。
そして、いつも演奏が終わってヨンシーが楽器を置くたびに「あ、エレキギターを弾いてたのか」、ゲオルグは「エレキベースを弾いてたのか」と、当たり前のことに少し驚く。
エレキギター、エレキベース、ドラムス、という普通のロックバンドの楽器編成なのに、そのサウンドとアンサンブルはそれを忘れてしまうほど抽象化されている。
光でもあり、闇でもあるようなギターノイズ。
力尽き果てたようでもあり、力強くもあるようなリズム。
すべてが抽象的な領域の中で、意味から解放されて鳴っている。
こんなバンドは60年代にも70年代にも80年代にも90年代にもいなかった。2000年代以降にシガーロスが独自に築いた偉大なスタイルである。
そして、ヨンシーの声。
悲しみでもあり、歓喜でもある。
奇跡のようなバンドだ。
次号ロッキング・オンでインタビューしています。
ぜひ読んでください。