人間とは踊る猿である

ザ・キラーズ『デイ&エイジ』
2008年11月19日発売
ALBUM
ザ・キラーズ デイ&エイジ
オープニング・トラック“ルージング・タッチ”からシングルの大名曲“ヒューマン”、そして“スペースマン”。この序盤の3曲で決まりである。シンセのまばゆいレイヤーと4つ打ちのビートにブランドンのあの声が載るという、完璧なキラーズ節。このニュー・アルバムは、少なくともキラーズが再び踊りはじめたという一点において祝福すべき作品である。1st『ホット・ファス』はゴージャスで軽妙なアルバムだったが、少々フィクショナルすぎた。前作『サムズ・タウン』はリアルで深いアルバムだったが、ロマンティックさが足りなかった。そしてこの『デイ&エイジ』は、前作で引き受けたものを抱えたまま軽快にステップを踏むことを選んだ、決意作である。後半にいくにつれてどんどんダークというかメロウになっていくが、そうなればなるほど、逆に頭の3曲の必然が際立つ。序盤の加速力が、アルバムを最後まで牽引するのだ。

歌詞の詳細までは現時点では分からないが、“ア・ダストランド・フェアリーテイル”や“ザ・ワールド・ウィー・リヴ・イン”という曲名から察するかぎり、寓話的なテーマが取り上げられているのだろう。そしてそれが集約されたのが、“ヒューマン”で歌われる「僕たちは人間なのか、ダンサーなのか?」という問いである。これに答えるならば、「ダンサーで何が悪い?」である。キラーズの手にかかれば、クイーンだってブルース・スプリングスティーンだってU2だって踊り出す。愚かな人間はその愚かさゆえに踊る。これは、踊りながら未来という崖っぷちに向けて行進する僕たちの、心強いサウンドトラックなのだ。(小川智宏)
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