ポップのど真ん中へ!

グライムス『アート・エンジェルズ』
発売中
ALBUM
前作サード『ヴィジョンズ』のスマッシュ・ヒットによりインディ界の新アイドルの座を射止めたグライムス。以来の3年間=支持派も否定派もその一挙一動に注目……という現代女性アクトにつきものの状況はタフだったようで、本作も紆余曲折を経た。しかし蓋を開ければ前作での精霊を思わせるメランコリックで甘い歌声は短いイントロ (M1) で後退、サニーでダンサブルなモダンR&B (M2、8) や80年代調 (M4) を筆頭に陶酔に満ちた軽快なポップ・スケープへ吹っ切れている。この変化を「メインストリーム過ぎる」と嘆く古株ファンもいるのだろうが、ポスト・ネット世代ならではのワイルドな折衷感覚はM3のインダストリアルやM6のデペッシュ・モード味なレイヴ等々意表をつく瞬間に健在。ギター他の奏法を習得した上で取り組んだというDIY精神もいいし、前面に出たヴォーカルとイヤーワームを誘発するフック作りの才が噛み合った強力な内容になっている。今回のお題はポップだったが、「グライムス」という名のプロジェクトがこれからもこんな風にどんどん果敢にチャレンジを続け、新たな音像を生んでくれることを祈らずにいられない。(坂本麻里子)