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たった3秒を、何度も繰り返している。この1音目、あなたにはどう聴こえるだろうか。機械的か、アナログか。過去の音か、未来の音か。始まりか、終焉か。希望か、絶望か。Bank Band、約3年10ヶ月ぶりの新曲。1音目のあとは「イントロは短く」という近年の音楽シーンの掟を破り、40秒間のイントロが鳴り響く。《宇宙を示している》という言葉の直後に宇宙的な音が広がるが、歌詞ではカオスな現代社会が鋭く描かれる。トラックはピアノリフのループが主体で、転調も加えながら螺旋を回り続けるよう。そんな音を通して、一見相反するものは表裏一体で、人間とは常にそのあいだで揺らぎながら、自分の感覚や考えの殻を破り続け、生と死を繰り返し命を繋いでいくのだということを見せてくれる。これまでのヒット曲の中でも「生まれた意味」について歌ってきた櫻井和寿が、《何の意味を持って生まれた?/その問いにこそ もう意味はない》と書いていること自体も、ひとつの考えの殻を破った行為だと言えるのではないだろうか。(矢島由佳子)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年4月号より抜粋)
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