誰も知らない「変身」の姿

スティーヴ・ヴァイ『モダン・プリミティヴ/パッション・アンド・ウォーフェア25周年記念盤』
発売中
ALBUM
ソロ1st『フレクサブル』(84年)と2nd『パッション・アンド・ウォーフェア』(90年)の間に生まれた未発表曲群を実に30年越しで完成させてアルバム化した『モダン・プリミティヴ』と、『パッション・アンド・ウォーフェア』25周年記念の最新リマスター盤の2枚をコンパイルしたWアルバム。ホワイトスネイク加入以降の「世界的ギター・ヒーロー」の片鱗のみならず、その前の「フランク・ザッパ・バンドの超絶テク担当」としてのユーモアと実験精神あふれる表情も、『モダン・プリミティヴ』には色濃く滲んでいる。ジャズ・スキャットが弾け回る極彩色の迷宮的オープニング・ナンバー=“バップ!”と、およそギター・プレイの概念を逸脱したフリーフォームなプレイを展開する“ダーク・マター”……1stと2ndの狭間に、マッド・サイエンティストが正統派の研究者へ進化を遂げたようなスティーヴ・ヴァイの変貌を物語るミッシング・リンク的な音空間が存在していたことを、『モダン・プリミティヴ』の楽曲は明快に物語っている。ラストを飾る組曲“ピンク・アンド・ブロウズ・オーヴァー”の晴れやかに錯乱した世界も、地軸が歪むほどのポップの揺らぎを体現していて最高。(高橋智樹)