本作で8枚目を数えるカナダ出身の双子デュオ。パンクや90年代オルタナ味が香るトムボーイな初期、元デス・キャブ・フォー・キューティーのクリス・ウォラをプロデュースに迎えたインディ/エモ・ポップ作……と00年代を通じ音楽性の裾野を広げてきた彼女たちだが、前々作からよりアクセシブルなポップのフィールドへと進出〜前作が全米初登場3位を記録し、ブレイクスルーを果たした。そのやや遅咲きな成功のキーとなった才人グレッグ・カースティン(シーア、ケリー・クラークソン他)とのコラボ第2弾になる本作は、M2、M5をはじめとする80年代風サウンドとフックの効いたメロディから成るモダン・ポップス路線を更に突き詰めた快作になっている。しかし仮にシンセやエフェクトのきらびやかな縁取りを取り払っても、M7の澄んだメロディ&ハーモニーをアコギ1本で難なく歌い切る図が想像できる、ソングライターとしての実力も頼もしい。偶然とはいえ、本作リリースの直後にフロリダ銃乱射事件の悲劇が起きた。ポップにおけるLGBTコミュニティの顔のひとつでもある彼女たちがM3にこめた切なさが、多くの人々の胸に届くことを祈らずにいられない。(坂本麻里子)