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聴くたびに、惹き込まれていく。メジャーデビュー作、という堅さはなく、普遍的な葛藤をバンドサウンドに乗せて寄り添うなきごとらしさに、さらに磨かれたポップさが加わり、確かな進化を感じさせる。水上えみり(Vo・G)の巧みな言葉選びは、流れる楽曲の中に引っ掛かりを作り出す。中でも“短夜”の圧倒的に耳残りのいいサウンド、そしてそこに導かれるように紡がれた歌詞――冒頭の《熱帯夜》と《寝たいよ》が重なり合い、《あなたあなたあなたあなたで/あたまがいっぱいだよ》とコロコロと転がるような感覚のまま、《あなたとひとつになりたいのです》というストレートなサビに雪崩れ込んでいく。その様はベタつく熱帯夜にふっとそよぐ夜風のように心地よい。そしてサウンドに厚みをもたらす岡田安未(G)のギタープレイに耳を傾けると、それぞれの楽曲のまた違った色が見え、『マジックアワー』の名の通り、表情を変えて沁みわたるのだ。新たな分岐点を迎えたなきごとから、一時も目を離せない、そんな魔法に包まれている。(江口祐里)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年8月号より)
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