「陰影」が浮き彫りにするもの

androp『blue』
発売中
ALBUM
androp blue
所属レーベルを離れ、「image world」を立ち上げたandrop。今作『blue』は、新しい環境に身を置いて力強く前進を始めた彼らの姿を生々しく感じることができる。まず、メンバー全員が作詞や作曲に関わっているというのが、目に見えてよく分かる変化。そして、従来の作品との違いを何よりも強く感じるのは、描かれている世界に黒い感情が濃厚に渦巻いているという点だ。例えば、激しい憎しみを抱いた体験を吐露する“Kaonashi”の衝撃は、とても大きい。その他の曲でも、絶望の闇に包まれながらもがく姿、曖昧模糊とした世界の中で抱く苛立ちなどが示されている。これまでのandropの音楽は「まぶしい光を求める作風であった」と言うことができると思うが、今作の基本トーンにあるのは端的に表現するならば「闇」。しかし、届いてくるのは、決して後ろ向きなものではない。「迷い」や「怒り」という感情の暗部の根底にある「生きることに対する真剣さ」という光を示している印象がする。つまり、これまでとは違うアプローチでバンドの本質にあるものを浮き彫りにしているのが、このアルバムだと思う。(田中大)
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