Mrs. GREEN APPLEが2015年のデビューから5年の活動を経て一旦の活動休止に入る時、いわゆる「フェーズ1」が終わるタイミングで、JAPANは大森元貴に尋ねた。「フェーズ2はどういうものになると考えていますか?」と。その時の大森の答えはこうだ。エンタメって、すごいエネルギーを持ってる。
その時代に紐づいて、人の心に、記憶に残るものを作れるのであれば、
そんなものはいくらでも作りたい
休止から約2年、2022年にカムバックしたMrs. GREEN APPLEは今日までの活動において、まさにこの言葉を体現する日々を送ってきた。私たちがこの言葉から想像したよりもずっとずっと自由で新しいエンターテインメントを届けている。もちろん、音楽を大切な軸として。バンドの既成概念にとらわれずに、このだだっ広い世界で自分たちがどこまでエンターテイメントとして昇華できるか、本気で勝負しようと思っています。もう音楽という枠でなくてもいいかもって思うくらい(笑)に、自由にイメージを広げてます。
とにかく、真新しいエンターテイメントを提示するグループになれたらと思っています。
チャートに何曲もミセスの楽曲が連なる状況が年単位で続いたり、数々の賞を受賞したり、何十万人も動員するライブを開催したりというのは確かに前人未到の偉業だが、それはあくまで結果であって本質ではない。
Mrs. GREEN APPLEというバンドは、10年前から変わらないメッセージ──希望の裏には絶望があるということ、人はどこまでも孤独であること、それでも自分を愛するには?という問いなど──を貫き、深め続けると同時に、特にこのフェーズ2においては「いかにしてそれを伝えるか」を徹底的に突き詰めている。
広さと深さを両立するのは容易なことではない。柔軟な発想を得るために広く世界を見渡すことと、己の深淵を覗いて深く潜っていくことを同時にやり続けるなんて、普通なら身も心も引き裂かれてしまう。でもそれをやるのがMrs. GREEN APPLEなのだ。圧倒的ポジションを得てなお絶えずエンターテインメントを更新し提供し続ける。その探究心とタフネスこそが彼らを今の境地に立たせている。
Mrs. GREEN APPLEが歩むのは道なき道だが、その轍には必ず、誰も見たことのない美しい花が咲いている。その開花をリアルタイムで目撃できている幸せを噛み締めながら、彼らのデビュー10周年を祝うべく特集を作った。彼らの足跡をたっぷり収めた別冊付録と合わせて、ミセスの飽くなき挑戦の日々を全力で讃えたい。
インタビュー=安田季那子 撮影=フジイセイヤ(W)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年8月号より抜粋)
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