オヴァルをよく知るリスナーも、逆に全く知らない方も、等しく刺激されること請け合い。驚きと新鮮味、そして何より底抜けの耳愉しさをもって。いわく“クラブ・トラック”を意識して制作された最新アルバム。その狙い通り、今作はオヴァル史上、最もダンス・フィールに溢れたものと言えるかもしれない。しかも、道具や手法は変えることなく、いわば繋ぎと構成の強度や速度によってノンストップ・ミックスを作り上げていくような目まぐるしさ。多彩にカットされた電子音やビート、あるいは加工されたヴォーカル＆ヴォイス・サンプルや具体音。それらが息もつかせぬ応酬を見せ、その撹拌の中にグルーヴやメロディ、あるいは歌さえもが立ち現れては形を変えながら展開されていく。いい意味で俗っぽさもあり、しかし、これぞオヴァル流エクスペリメンタル・ポップ、という絶妙な匙加減。たとえるなら、アイドルやボカロともコラボしちゃうジャパニーズ・トラックメイカーと、ハドソン・モホークやOPNらのグリッチ・ホップとの間を埋めるミッシング・リンク、とでも言おうか。25年にしてキャリアの新たな扉を開いたような作品だ。（天井潤之介）