2013年『ヘジテイション・マークス』以来となるNINの5曲入りEP『ノット・ジ・アクチュアル・イヴェンツ』が発表されたのは、2016年クリスマス休暇が始まろうという時。ロマンチックな雰囲気もノスタルジックな気分も一気に破壊する、NINらしいサウンドだったのでぶっ飛んだ。トレント・レズナーはここ数年、映画のサントラなど新分野で才能を発揮させている。なので、今作を発表するからには、彼の中にNINに戻る必然があったはずで、それがここには明確に刻まれている。また彼は昨今の音楽シーンへの怒りやトランプ政権への怒りも表明していたので、それらも恐らく原動力となったはずだ。前半はこれまでのNINらしいアイデンティティーを残したインダストリアル・サウンドだが、より大胆に、よりシンプルに響くように音が再構築されていて、それが新鮮。聴きどころは後半で、デイヴ・グロールがドラムで参加した曲、デイヴ・ナヴァロがギターで参加した曲などは、これまで聴いたことのなかった方法でカオティックなヘヴィ・ロックが鳴り響く。まるでNINの新世界の入り口を見たようにすら思えるのだ。（中村明美）