UKギター・ロックを積極的に追い続けている人ならピンと来ると思うのだけれど、新人のプロフィールに高確率で登場するのが「ザ・クークスのサポートでツアーを回った」との記述だ。ほぼ同時期にシーンに登場したアークティック・モンキーズと比較すると地味に感じてしまう彼らだが、両者の名前を並べて挙げて「影響を受けた」と語る若手も数多い。デビューから10年、コンスタントにアルバムを出し、精力的にツアーを回り、新人に影響とチャンスを与え、自らも刺激を受け取る、そんな健全な循環の中でクークスは成熟を重ね、同時に瑞々しくフレッシュな魅力も保持し続けてきたことが、このベスト盤を聴くと理解できるはず。ガレージとブリットポップを結び、荒く衝動的な一瞬一瞬のロックの興奮と、聴く者の耳と心にじっくり滑らかに染み込んでいくリリカルでポップなメロディと声、そんな彼らの二刀流は本作収録の新曲の”ビー・フー・ユー・アー”でも遺憾なく発揮されている。「現時点でのベスト」というそのタイトルにも、10年で一区切りの懐としない、現役ど真ん中の彼らのプライドを感じさせて天晴れです。 （粉川しの）