ユーモアと脱力感とブレないロック

奥田民生『サボテンミュージアム』
2017年09月06日発売
奥田民生 サボテンミュージアム
個人名義では4年ぶり。2年前に立ち上げたRCMRレーベルから、ようやくオリジナルアルバム登場である。だがライブ盤とかサンフジンズとかユニコーンとかいろいろあったのでブランク感はまったくないし、そもそもそういう感じを抱かせない作風だから、見事な安定感で新曲を聴かせる。シニカルな歌詞をハッピーに歌い、臆面もなくギター自慢もする。韻の踏み方が絶妙なサイケ曲、サボテンの歌は南部ふうと、奥田らしい遊び心が満載だ。ご機嫌なロックンロールやダミ声で歌うブルースでブレない個性が炸裂するのはさすがと言うしかない。「若い芽を摘む」なんて歌ってるが、奥田を抜くのは至難の技だ。バンドのテーマ曲になっている1曲目のMTR&Y(奥田、斎藤有太、小原礼、湊雅史)での録音も、この上なくシンプルだが豊かで自然体。お気楽にやってるように見えるが、その削ぎ落としぶりは名人芸と言いたい。手作り感満載のMVも然り。大根仁監督の新作で「力まないかっこいい大人」と憧れられる奥田の本質は、程よいユーモアと脱力感を普遍性高いロックに織り込む、彼の音楽にこそある。(今井智子)
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