ちなみにこの5年間にはドラムのリアが脳の手術を受ける(今は無事回復)など危機的状況もあったようだが、そこからの再始動に際して妙にポジティブになって人生を祝福し始めたり、癒しを求めて軽やかなアコースティック・サウンドを鳴らし始めたりは絶対しないのがBRMCのBRMCたる所以。
本作も見事に漆黒のサイケデリア、しかも5年分溜めに溜めまくった圧と熱を何重にも塗り重ねた結果、5分超え、6分超えのナンバーが大半を占める大作となった。ニヒリスティックなガレージ・ギターにドープなアンビエンス、そして重く引きずる足取りで不滅のブルーズを刻み込むグルーヴは、聴く者をハードボイルドの沼に引きずり込んでいき、没入感が半端ない。長大な尺を使いきる、暗闇に差し込む一筋の光のようなシンフォニーの昂揚も素晴らしい。(粉川しの)