『絶対零度～未然犯罪潜入捜査～』の主題歌“もし君を許せたら”を聴いて改めて実感させられるのは、家入レオが物語の描写に長けたシンガーであるということだ。声が帯びるニュアンスは、その時に抱いている感情に必ず左右される。したがって、表現としての巧拙はともかく、どんな人の歌にも何かしらの感情はしっかりと宿っている。しかし、歌に物語を宿らせるのは、本当に難しい。曲のなかに渦巻いている空気感を的確に捉えて、様々な色合いの絵の具を使うかのように表現する力量が、とてもシビアに問われるからだ。その点に関する彼女の素晴らしさは、今回の曲を聴けばよくわかる。最愛の人との別れによって閉ざされた未来は、「君」を許すことによって取り戻せるのか？ 自問自答を繰り返して身悶えしている人物の姿が、歌詞として言語化されていない風景、温度、色彩なども伴って届いてくる様は、演劇的であると言っても過言ではない。「若きドラマ主題歌の女王」とでも言いたくなるくらい、彼女の曲はたくさんのテレビドラマを彩ってきたが、そうなっている最大の理由はここにあるのだと思う。（田中大）