新世紀フォーク、誕生の瞬間

フリート・フォクシーズ『ファースト・コレクション(2006-2009)』
発売中
ALBUM
フリート・フォクシーズ ファースト・コレクション(2006-2009)

ちょうど10年前のこと、フリート・フォクシーズの登場はとても鮮烈だった。ネルシャツを着てアコースティック・ギターを抱えた、長髪に髭面の若者たち。ブッシュ政権末期の混沌に現れた彼らは、見た目からして60年代のフォーク・ミュージックを強烈にフィードバックさせていたが、それ以上に音そのものの清廉さが人の耳を惹きつけた。「いまさら」と言わせない迫力と説得力があったのだ。ビーチ・ボーイズ譲りの美麗なコーラス・ワークとアパラチアン・フォークを思わせる土の匂いがするアコースティック・サウンド。それは人間の血と体温が通った温かいものだったが、同時に汚いものを一切受けつけないような厳格さも持ち合わせていた。実際、歌自体はノスタルジックなようだが音響はリバーブを多用するなどモダンなもので、要するに、フリート・フォクシーズのフォークロアは新しい時代を切り拓くための過去への旅だった。21世紀に響いた高潔な「ハーモニー=調和」だ。

本作は当時絶賛されたデビュー・アルバム『フリート・フォクシーズ』の10周年を記念して、初期音源を完全にコンパイルした企画盤。ファーストのほか、バンドのスタイルが完成したEP『サン・ジャイアント』(08)、自主制作EP『ザ・フリート・フォクシーズ EP』(06)、さらにB面やレア・トラックをまとめた4枚組だ。いま聴いてとりわけ興味深いのは、現在では入手困難な最初期の音源となる自主制作盤だ。すでに厚みのあるコーラスやクラシック・ロックからの濃い影響など彼ららしさも存在するが、どこかインディ・ギター・バンド的な素朴なフレッシュさが残っているのが微笑ましい。逆に言えば、ここから2年で引き算によってあれほど完成度の高いものを作り上げたことに感服もするのだが。(木津毅)



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フリート・フォクシーズ『ファースト・コレクション(2006-2009)』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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フリート・フォクシーズ ファースト・コレクション(2006-2009) - 『rockin'on』2018年12月号『rockin'on』2018年12月号
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