ロンドンの多民族ダンス・ポップ・バンドが4年ぶりのサードで挑んだことは、説明するまでもなく、直球なタイトルと、多様で平等な社会の到来を願う表題曲に集約されている。そう、これまでも故郷のコスモポリタニズムを旗印としてきた彼らは、ここにきてグローバルに視野を拡大。相変わらず無名有名入り交じるゲスト・シンガー/MCは、英米に加えてジャマイカやナイジェリア、南アフリカ、ジンバブエから招いており、支え合いの精神や個人の自由を讃え、ネガティブをポジティブに転化することを訴える曲の数々に、申し分ない説得力を与えている。
また、ドラムンベースという原点を踏まえつつ、年々守備範囲を広げていたサウンド表現においては、ファンク/ディスコ色の強かった前作を経て、今回はダンスホールとレゲエが主役に浮上。かつ、曲ごとにますます多くの視点や声を織り込んで重層的な表現を試み、究極的にはキャッチーなポップ・ソングに着地させるのが、2019年仕様のルディメンタルだと言えるのだろう。最たる例が、シングル曲の“レット・ミー・リヴ”。メジャー・レイザーと共同プロデュースし、前作への参加を機に出世したアン・マリーと、ナイジェリア人シンガーのミスター・イージーがボーカルを担当、レディスミス・ブラック・マンバーゾがコーラスを添えた曲だ。
そのレディスミス〜のようなレジェンドを若い世代に引き合わせる一方で、新進アーティストをショウケースするという定評ある役割も、引き続き果たしている彼ら。今をときめくMNEKやアン・マリーの後を追って“ルディメンタル経由”で大舞台に飛び立つのは、同郷のフォーク・シンガー、ハック・ベイカー辺りか? クレジットをチェックしながらそんな風に思い巡らせるのも、この人たちの作品ならではの楽しみのひとつだ。 (新谷洋子)
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