爆音が見つめる広い世界

HYDE『ANTI』
2019年06月19日発売
ALBUM
極上のラウドロックの塊となった最新アルバム。全世界への配信がCDより一足早くスタートしていて、5月は全米ツアーを回っていたことにも表れているが、HYDEの音楽は海外も視野に入れて制作されていることが、聴けば聴くほどよくわかる。そして、掲げられた『ANTI』というタイトルが示している反骨精神が、彼を突き動かしている大きな力であることも伝わってくる作品だ。ハロウィンが日本に定着する前からこのイベントの要素を取り入れた個性的なパーティーを開催していたり、今回のアルバムに至るまでの約1年間に5枚もシングルをリリースしたり、リリース前の新曲をいち早くライブでたくさん披露して、観客の反応も踏まえつつシングル曲を決めたり……彼がこれまでに展開してきた規格外の活動は、具体例を挙げだすとキリがない。「ANTI」とは何かを完全否定する虚無的な態度ではなく、「もっと可能性が広がるやり方があるはず」と模索を繰り返すクリエイティブなファイティングポーズだ。このアルバムは、HYDEの本質にあるそういう姿勢を強烈な爆音に託して表現した1枚だと言えよう。(田中大)