名前のとおりシカゴ出身で、現在34歳のR&BシンガーであるBJ・ザ・シカゴ・キッド。活動を始めたのは00年代初めだけど、おそらく多くの音楽ファンは、チャンス・ザ・ラッパーのデビュー作であったミックステープ『Acid Rap』(13年)で2曲に参加していたのをきっかけに、彼の存在を知ったんじゃないだろうか。
その後もケンドリック・ラマーやスクールボーイ・Q、コモンやソランジュらの曲にゲスト参加する一方、16年にはアルバム『In My Mind』で名門モータウン・レコードからメジャー・デビュー。もともと教会で歌うことを覚えたというBJの音楽は、トラック自体がどれだけデジタルだったとしても、どこかに必ずアナログ的な「温もり」がある――根っこの部分に古典的なソウル・シンガーの魂が宿ってて、チャンス・ザ・ラッパーとやたら気が合うのも、きっとその「フィーリング」の部分が一番なんだろう。
本作は、そんなBJの約3年ぶりとなる新作アルバム。今回もやはり、まず目を引くのは豪華なゲスト・ラッパー陣とのコラボ曲で、たとえばアンダーソン・パークを迎えた“Feel The Vibe”は、レトロなグルーヴが暑い日のビーチBBQによく似合いそうな極上のサマー・チューン。大御所リック・ロスと共演した“Playa's Ball”でのサム・クック的なオールドスクール・ソウル感も、たまらなくいい。
一方、アルバムの中盤〜後半にはBJの美声にどっぷり浸れるスロー・ナンバーもしっかり用意してあって(“Too Good”、“Close”、アフロジャックと組んだ“Reach”など)、全体の構成もバランスよくまとめている。長い一日の終わりに、枯れかけた心の泉を優しくチャージしてくれる、癒しのサマー・ソウルをご堪能あれ。 (内瀬戸久司)
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