憂いと癒しとが同時に宿る歌声

milet『Drown / You & I』
発売中
EP
英語と日本語をナチュラルにメロディにのせながら、唯一無比の深い深い歌声を響かせるシンガーソングライター、milet。彼女の4thEP『Drown / You & I』は、その歌声が持つ憂いと滋味深さを存分に堪能できる作品だと思う。表題曲のひとつ“Drown”はTVアニメ『ヴィンランド・サガ』のエンディングテーマだが、その「歌」の在り方は、今の日本のポップシーンにおいて非常に稀有なものだと思う。現代のブルース(痛み)を携えながら力強さの中にも癒しを感じさせる歌が、圧倒的に胸の奥深くへと染み込んでくる。一方の“You & I”で聴かせるドリーミーなエレクトロポップにしても、洋楽とか邦楽とか、そんな線引きが頭に浮かぶ隙さえ与えないほど、声の響きや歌詞のさりげない押韻はただひたすらに「音楽的」だ。3曲目“Fine Line”のリズムやテンポを活かした歌唱もそう。4曲目の“Imaginary Love”を聴けば、さらに彼女の歌声の本質に触れることができるだろう。ミニマルなサウンドプロダクションに際立つ彼女の歌声。その声自体が悲しみと救いとを同時に表現しているのを実感するはず。(杉浦美恵)