ワープの歴史は電子音楽の歴史

V.A.『ワープサーティー・セッションズ』
発売中
BOX SET
V.A. ワープサーティー・セッションズ

至福、である。そして貴重でもある。90年代以降の電子音楽の歴史の、一部だがこのうえなく重要な一部の記録。それは70年代から続く音楽の伝統から受け継がれてきたものだ。

70~80年代のパンク/ニュー・ウェイブ期に、ヒューマン・リーグやキャバレー・ヴォルテールといったアーティストを生んだ英国きっての電子音楽都市シェフィールド。89年、同地に設立されたのがワープ・レコーズだ(現在はロンドンに移転)。そのワープは19年で設立30周年。本作はそれを記念して企画された同レーベルのアーティスト10組の貴重音源を12インチ・ヴァイナル10枚に収めた限定ボックス・セットだ。バラ売りもしているが、CD発売や配信は予定されていない模様。

100時間以上ものワープ音源をオンエアしたオンライン音楽フェス『WXAXRXP』(19年)で放送されたものを中心に、BBCの故ジョン・ピールの番組などラジオ放送音源を収録。古くは設立直後の90年のLFOから、エイフェックス・ツインやプラッド、最近のフライング・ロータスやOPN、19年録音のビビオマウント・キンビーなど。録音時期は90年代と10年代以降に集中していて、いわば初期ワープの貴重音源と、現在の所属アーティストの音源が併録されている。大半は未音盤化音源だ。

最近のワープはバトルスや!!!など電子音楽の域を脱した幅広いサウンド・スタイルを内包しているが、ここでは電子音楽レーベルとしての顔がうかがえる。メンバーの脱退や死去でもうバンドとしての実体はないLFOのクールで硬質な電子音響、レーベルの顔であり、テクノという音楽ジャンルの象徴でもあるエイフェックス・ツインは、ちょうど『アンビエント・ワークス』から『アイ・ケア・ビコーズ・ユー・ドゥ』に差し掛かる時期のアンビエント音響、靄がかかったようなダウンテンポ・エレクトロニカがたまらなく魅力的なシーフィール、これが唯一のラジオ・セッション(しかも未音盤化)だというボーズ・オブ・カナダの幽玄で深遠な生演奏など、90年代モノはどれも懐かしくも新鮮だ。

一方レコードでの電子音響を生楽器中心で再現して新鮮な感動を与えるビビオ、『コスモグランマ』期、サンダーキャットらを従え洗練された演奏を聴かせるフライング・ロータスらの若手も素晴らしい。なかでもOPNバンドの一員で18年大傑作ソロ『Ultraviolet』を発表したケリー・モーランのポスト・クラシカル・サウンドは、ある意味で電子音楽レーベルとしてのワープの最新進化型ではないかという気さえする。素晴らしい。(小野島大)



詳細はBEATINKの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

V.A. ワープサーティー・セッションズ - 『rockin'on』2020年1月号『rockin'on』2020年1月号
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