輝きを増した音像に浮かぶ今のアメリカの姿

リアル・エステート『ザ・メイン・シング』
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ALBUM
リアル・エステート ザ・メイン・シング

ニュージャージー発のインディ・ロック・バンド、リアル・エステート。09年のデビュー以来、着実な活動で評価を築いてきた彼らだったが、そうしたなかトラブルに見舞われたのが4年前。結成メンバーの一人だったマット・モンダナイルが突然の脱退。後にその理由が女性へのセクハラ疑惑だったと判明するのだが、それを受けてバンドは再編を余儀なくされることに。結果、その最中に制作された前作『イン・マインド』(17年)の評判に大きな影を落とすこととなった。

それから3年。デビュー10年の節目を跨いで完成した5枚目の本作は、そうした苦難もへて芽生えたバンドの変化、さらには取り巻く時代の変化が如実に反映された作品といえる。

まずは最大のトピックが、初となる外部ミュージシャンの制作参加。ザ・ウォークメンのマットがパーカッションを叩き、シルヴァン・エッソのアメリアがコーラスを添え、随所に配された弦楽アレンジメントが持ち味の端正なギター・ロック・サウンドをレイヤー豊かに押し広げている。“ペーパー・カップ”はその最大の成果といえるが、加えて本作では、シンセやドラム・マシーンが効果的に使われるなどエレクトロニックな要素が比重を増しているのもポイント。“ノベンバー”を始めグルーヴィに跳ねる本アルバムのリズム構成は、ソロでダンス・ミュージックも制作するドラマーのジャクソンの貢献度が高いらしい。また、前作では演奏のみだった新メンバーのジュリアンも作曲&メイン・ボーカルを務めるなど、再編後のバンド像が確立されつつあることを窺わせる。

そして、そんな本作のトーンを決定づけているのが、昨今の政治情勢や社会不安、あるいは気候変動といった事象が投影された歌詞。《君を迷子にさせるわけにはいかない/この病んだ世界で》と歌う“サイレント・ワールド”、《花開く毒》《キノコ雲》といったワードが躍る“オルソー・ア・バット”など、楽曲の端々に覗く不吉で不穏なイメージは本作が今という時代のムードと密接に結ばれた作品であることを印象づける。これまで所謂プロテスト・ソングと呼ばれる部類の歌詞を書くタイプではなかったメイン・ソングライターのマーティン。が、今回そこに踏み込んだ背景には、本人も認めているように、今年がアメリカで大統領選を控えたタイミングであるからに他ならない。「こんな時期に、ただのインディ・ロックとかポップのアルバムを作ったらバカみたいだからね(笑)」。マーティンが筆者に語った言葉だが――ともあれ、本作は彼らのキャリアにおいて重要な画期を刻むアルバムとなるに違いない。 (天井潤之介)



詳細はBEATINKの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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リアル・エステート ザ・メイン・シング - 『rockin'on』2020年4月号『rockin'on』2020年4月号
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