この機会に目録作ってほしい

オアシス『ドント・ストップ…(デモ)』
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SINGLE
オアシス ドント・ストップ…(デモ)

ノエル・ギャラガーは、時々オアシスのお宝を発掘する。彼が自分の成果物を発掘する羽目になるのは、録ったこと、演ったこと、そしてどこに保管しておいたのかを見事に忘れているからで、目的を持って発掘しているのではなく、何かの拍子にたまたま見つかるのだ。『ビィ・ヒア・ナウ』のリイシュー(2016)の目玉特典になった「Mustique demos」(1996年にマスティク島で録ったという史実だけが囁かれてきた、伝説のセッション音源)もそうだった。「失くしたと思ってたら見つかった」「聴いていると思い出が蘇ってくる」などと言っていて、いや最初からちゃんと管理しといてくださいよという話なのだが……何はともあれ、この『Don't Stop…』もまた同様にノエルが発掘した未発表音源だ。ロックダウン中の暇つぶしに自宅の箱やら何やらを整理しているうちに見つけたそうで、彼曰く「過去には約15 年前の香港でのサウンドチェックでやったバージョンしか存在していなかったと思うけれど、今回見つけた音源がそのサウンドチェック前のものか、後のものなのかはわからない」という。

約15年前というと、おそらく『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』ツアー(2005〜2006)中のことで、今回の音源も香港ライブの前後、つまりツアー期間中に録られていた可能性が高い。ちなみに当時、リアムはサウンドチェックに滅多に顔を出さなくなっていた。同ツアーの大阪城ホールでノエルにインタビューをした際も、リアムは開演直前まで会場入りすらしていなかったのを覚えている。ノエルは「リアムは(リハをサボるから)クソみたいな声しか出ない日もある」と愚痴っていたし、リアムも「(リハを仕切っている)ノエルはコントロール・フリークの独裁者」だと後にディスっていた。“Don't Stop…”が録られた当時の背景を踏まえた以上の推察からも、同ナンバーがオアシス名義の未発表音源というよりも、オアシスからソロへと移行していく過程のノエルの習作として聴こえるのも、当たり前なのかもしれない。

メロディは紛うことなきオアシスだし、エレキ・ギターのラフ案的なグルーヴは、ここに低音を足せばオアシス後期のサイケデリックに近くなる。その一方で、チェンバー・ポップを感じさせる端正なアコギや控えめなパーカッションは、フライング・バーズの1作目を予感させるものだ。自分ならどう歌うか、ひとりならどう仕上げるかという引いた視点がここにはあるのだ。ノエルは自分の曲について「サウンドは変わってもメロディはずっと変わらない」とよく言うが、それは端境期の本デモでも証明されているのではないか。 (粉川しの)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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オアシス ドント・ストップ…(デモ) - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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