日常を織り重ねていく「想い」の歌

さユり『葵橋』
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さユり 葵橋
アニメ『イエスタデイをうたって』の第2弾主題歌として書き下ろされたこの楽曲にさユりは、大正時代に新宿近辺に存在した駅の名前をタイトルとして冠した。僕らの目の前にある「何気ない日常風景」は、数多の人々の歴史や足跡、そこに刻まれた感情が幾重にも織り重なり上書きされた果てに生まれたものである――。それこそ“十億年”や“平行線”など『ミカヅキの航海』の楽曲群で突き詰めてきた世界観のスケールを「今、ここ」の生活に直結させながら、新たなリアルの地平を切り開きつつあるさユりの姿が、この“葵橋”には確かにある。

アコギとキック4つ打ちを中心とした、ファンタジックな浮遊感を備えた音像の中で、《僕らは季節を耕し続ける》と決然と宣誓するさユりの歌声がひときわ鮮やかな生命力をもって響く。そして、楽曲終盤に登場する《僕らは言葉を耕し続ける/また会える時をただ祈りながら》の一節は、音楽を巡る環境が一変してしまった現在の状況の中でなお、一曲一曲に想いを込め続ける表現者・さユりの情熱の在り処を指し示しているように思えて、抑え難く胸が震える。(高橋智樹)

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