サンボマスターの音楽は、リスナーの心を鼓舞する言葉の宝庫であると同時に、その言葉を眩しいくらいに光り輝かせる音にも満ち溢れている。言い方を変えるならば、「言葉と音の有機的な結合によってネガティブな感情を背負い投げする瞬間を果てしなく連鎖させていくのが、サンボマスターの音楽である」という感じだろうか？ 今作に収録されているふたつの新曲も、そういうことを強く実感させてくれる。腐っていくばかりの心を蘇らせるフレッシュなエネルギーに満ちた表題曲“はじまっていく たかまっていく”は、メンバーが一丸となって醸し出す濃厚なグルーヴ、昂りまくったギタープレイも、言葉と同等のポジティブなメッセージだ。孤独に苛まれている人を激しく抱きしめるかのような“忘れないで 忘れないで”は、生々しく躍動するビートがシンプルな歌詞の言葉に果てしない深みを授けている。極上のサウンドに身を任せながら心を震わせると、美しい言葉を一際真っ直ぐに受け止めることができるが、そういう喜びを目いっぱいに体感できるサンボマスターの音楽に浸るひと時は、やはり心底楽しい。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年10月号より