メロディをはみ出すくらいの勢いで詰め込まれた日記のような言葉が、怒涛の勢いで流れてくる。他人にとってはどうでもいいことも、終わったことも、これから始まっていくことも。世界の真実なんて本当はどうでもよくて、大事なのは「私」にとってそれが真実かどうか。だから上野羽有音(Vo・G)は《もっと刺して/ずっと深くて/また騙して》(“嘘ばっかり”)と歌うのだ。TETORAのこのセカンドアルバムは、相変わらず塊のようなスリーピースロックの音に乗せて、相変わらず寂しさと高揚のあいだを行ったり来たりしながら生きている日々が歌われる、という意味では何も変わらない彼女たちの記録だが、たとえば“I'm sad”で明るいロックンロールとともに歌われる《なんでも出来るようになったのに/でも 前よりなんだか足りてないみたい》とか、どっしりとしたリズムとリフが耳に残るラストトラック“さよなら気遣い”での《私は君が教えてくれたものとずっと生きていきます》とかのフレーズには、さりげなくも決定的な変化の季節と、そのなかで発見した「自分にとっての真実」が刻まれている。(小川智宏)
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年11月号より