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昭和生まれの人間からすれば“関白宣言”と聞けばすぐに思い浮かぶ曲がある。その昭和の歌は、結婚生活に対する男の身勝手な理想をユーモラスに描いた歌だったが、その昭和の“関白宣言”が持つ感動的な物語性を一切排除し、どこまでもダメな男のリアルを描いたのがヤングスキニーの“関白宣言”だ。人間の情けなさもどうしようもなさもすべて曝け出したラブソングがここにある。かやゆー(Vo・G)の歌は、都合よく自分のダメさを棚に上げたりしない。《今までのまま最低な天才ミュージシャンか/このまま何もできない優しいだけの奴か》と、字面だけを見れば相当に不遜な二択を《あなた》に委ねるズルさを描いたかと思えば、その二択はいつしか《今までのまま最低だがあなたのための音楽か/このまま誰にも届かない嘘くさいラブソングか》と、バンドマンとしての在り方を世に問うような歌詞へと膨らんでいく。この曲はヤングスキニーによる「ラブソングの再定義」なのかもしれない。それはやはりどこまでもリアル。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年6月号より)
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