思考を促す時間芸術

luki『瓶とスコール』
発売中
DIGITAL
luki 瓶とスコール
本誌SCENEのページでも触れたlukiのデジタルシングルで、彼女が100kmのウルトラマラソンに挑んでいる時に体験したという魂の浄化から着想を得たナンバー。聴こえてくるのは、全編がとても穏やかで温かみのある、美麗なフォークロックの曲調である。ところが、lukiの綴る歌詞は嫌な記憶やささくれだった感情に基づいていて、それらをすべて洗い流してくれるスコールのような浄化作用について歌っている。限りなく祈りに近い衝動だ。つまり、激しいエモーションが渦巻いているのに、曲調は穏やかなのである。現代のポップミュージックは歌詞と音楽の情緒がシンクロしている場合がほとんどで、たとえば60~70年代のフォークロックなどによく見られたlukiの手法は珍しい。それが現代へのカウンターになっている。衝動を詩的に綴り、穏やかな曲調の中でリスナーが思いを噛み砕くための余白を残している。幻想的なフルアニメーション制作となった“瓶とスコール”MVについても同様のことが言えるだろう。音楽や映像がもたらす作用を深い部分で理解し、信頼しているlukiならではの手法だ。(小池宏和)

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