「CUT NIGHT」lukiスペシャルライブ/池袋harevutai
2022.07.09
●セットリスト
01. FAKE
02. アイスグリーン
03. 墓場鳥
04. SSRI
05. Bang Bang (My Baby Shot Me Down)(ナンシー・シナトラカバー)
06. フーチー・クーチー・マン(マディ・ウォーターズカバー)
07. Move Over(ジャニス・ジョプリンカバー)
08. 黒うさぎ
09. 瓶とスコール
10. 都会の漂流者
(アンコール)
11. 朝日のあたる家(アニマルズカバー)
12. Boom Boom(ドクター・フィールグッドカバー)
13. ハイエナ
『CUT』主催によるトーク&ライブ複合イベント「CUT NIGHT」Vol.13が7月9日、ステージに巨大なLEDが設置された未来型のライブスペース・池袋harevutaiにて開催を迎えた。渋谷陽一がロックの今と昔を語るトークライブの今回のテーマは「プログレとキング・クリムゾン」。プログレッシブ・ロックが誕生した必然、その中でキング・クリムゾンがどのような存在で、現在の若いバンドにその本質がいかに継承されているかまでを語り尽くす、壮大なトークライブとなった。
そしてlukiによる恒例のライブ。幻想的なブルーの照明の中、スタートしたのは2018年のアルバム『ACTRESS』収録の”FAKE”。《昨日は老婆で 明後日は少女になる》という印象的なフレーズで始まり、温かさの中に不穏なムードを孕みながらゆったり展開していくミディアム・チューンで一気に空気をlukiワールドに染める。
巨大スクリーンに映し出される美しいCG映像と共に繰り広げられる“アイスグリーン”に続いて、この日は新曲“墓場鳥(サヨナキドリ)”が序盤から披露された。曲前に、《戦うつもりが 愛してしまった》という歌詞に繋がる、マギー・Q主演の映画『マーベラス』のエピソードを本人が語っていたが、そこから美しく豊かでオリジナリティ溢れる、音楽だから描けるストーリーを再構成するソングライティングセンスに改めて感服させられる1曲だった。
中盤、ハープの腕前も冴え渡る“Bang Bang””フーチー・クーチー・マン“のカバーに続き、この日が初披露となるジャニス・ジョプリンの”Move Over”のカバー。オリジナルの日本語詞の素晴らしさがlukiのカバーの聴きどころだが《あたしには男が必要なの》という直球の言葉に火を点けられたように、円山天使(G)、山本哲也(Key)、張替智広(Dr)が爆裂ハードロック・アレンジを展開。それと渡り合うlukiの歌も強い! 後半に披露された“黒うさぎ”“都会の漂流者”には、これまで幾度も演奏されてきた人気曲でありながら、ロックもブルースもエレクトロも何でも呑み込みながら強くなった今のlukiが歌うことで新たな命が吹き込まれているのを感じた。
オーディエンスの熱気に包まれながら駆け抜けたアンコール3曲の後のlukiの表情は、いつもにも増して晴れやかだった。トーク・パートでキング・クリムゾンの本質を今の時代に体現するサウス・ロンドンのバンドとして、ブラック・ミディが紹介されていたが、lukiがライブを重ねながら追求していることもまた、洋楽ロックが積み重ねてきた表現と深い呼吸をしながら、今の時代における先鋭的な音とメッセージを探すスリリングな冒険なのだということを感じた一夜だった。(古河晋)