戻ってきたメッセージ

ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース『リターン・トゥ・グリーンデイル』
発売中
ALBUM

この号が出るころ米大統領選がどういうことになっているのか想像はつかないが、本ライブ盤がこの時期に出されたことには明確な意思がある。『グリーンデイル』はニール・ヤングの数多い作品中もっともコンセプチュアルなもので、北米沿岸の架空の町を舞台に、環境運動のプロにして反戦運動家というグリーン一家を軸に家族問題、環境破壊、反戦、メディア問題などをテーマに物語が繰り広げられる。もともと楽曲を作りながらすぐに一発録りでレコーディングしていったもので、理解を深めるためにライブでは同時進行で演劇パートも付けるなど、極めて実験的なパフォーマンスを繰り広げた(03年に同趣向で日本公演も実現)。

これまでにもニールひとりの弾き語りバージョンを始め彼自身が監督した役者たちによる映画版など各種発表されてきているが、本ライブは03年9月にカナダ、トロントでのステージで、クレイジー・ホースの重いビートでバックを付けていく。“ダブルE”や“ビー・ザ・レイン”など、すぐに記憶に残るキャッチーな曲もないではないが、やはり全体の流れを受け止めながら聴くのが正解だろう。物語的にもキーとなる“デヴィルズ・サイドウォーク”を勝手にドナルド・トランプが使ったこともニールを激怒させたし、環境問題を訴えたスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリが出てきたときは、この物語を締めくくる娘サン・グリーンの姿が重なった。03年来日時にインタビューしたとき、ニールは「(若者たちは)何をどう感じようが自由だけど、年寄りの決めた枠を破って声をあげるべきだ。サン・グリーンのようにね。彼女は自分がやるべきだと思ったことを行動に移した」と語ってくれた。そのメッセージは確かにどこかに届いているが、さらに広く届けとこうしてまたまたニュー・バージョンの登場だ。(大鷹俊一)



詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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『rockin'on』2020年12月号