この年、ウッドストックにおける巨大フェスの誕生、ジョンとヨーコの結婚、ブライアン・ジョーンズの不慮の死、そしてオルタモントの悲劇などロックシーンには光と影が激しく明滅し、その激動に触発されてアーティストたちの表現衝動は凄まじいレベルにまで高まっていたのだろう。
レッド・ツェッペリンが衝撃のデビューを果たしてロックンロールをロックへと進化させ、キング・クリムゾンがアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』でプログレッシブ・ロックという新たな道を切り開き、モッズ出身のバンドだったザ・フーはアルバム『トミー』で「コンセプト・アルバム」という新たな概念を打ち立て、またアメリカではザ・バンドらがカントリー/ルーツ・ミュージックに寄ったロックで大きな波を起こし、CSNやニール・ヤングがフォーク・ロックの道を示した。
つまり1969年という年は、今あるロックのあらゆるフォーマットや文体が生まれた、まさにビッグバンと呼ぶべき瞬間であり、それが作品として刻まれた数々の「永遠のロックの名盤」が生まれた、そんな奇跡の年なのである。
この年にリリースされた歴史的名作の数々、そしてアーティストたちの発言の数々は、ロック/ポップ・ミュージックの本質そのものであり、今でも普遍的な力を放っている。
ビートルズ、ザ・フー、キング・クリムゾンのインタビュー記事、ローリング・ストーンズの長編コラムなどで構成したこの大特集で、ロックの革新的なフォーミュラが輝きを競い合った1969年をたっぷりと追体験してほしい。山崎洋一郎
(ロッキング・オン最新号『1969─ロック、ビッグバンの時代』巻頭特集リード文より)