トラヴィス・スコットやニッキー・ミナージュ等が参加した1stアルバム『Die Lit』が全米アルバム・チャート3位を獲得したプレイボーイ・カーティ。その続編として、自身の最高傑作が出ることを2020年頭から予告していたわけだが、首を長くして待っていたリスナーも多いであろう約2年半ぶりの2ndがリリースされた。カニエ・ウェストがエグゼクティブ・プロデュースを担当。そのカニエをフィーチャーした“Go2DaMoon”はカニエ節ともいうべく、不穏かつ煽情的なトラックとラップが炸裂しつつ、そこにカーティは合いの手のようなラップを挟み込んでいく。
マンブル・ラップの代表格でもある、情感をそぎ落とし、淡々とリピートされ、ミニマリズムを追求したようなラップの心地よさはやはり白眉。中でも、キッド・カディが参加した“M3tamorphosis”では、ハイトーンで端切れの良いラップに言葉が聞き取りづらいフロウを絡ませる独自性の高いものが、ロウでジャンクなビートの一部であるかのごとく淡々と繰り返される。そして、アクの強いアクセントで《Metamorphosis》や《I feel like god》といったフレーズを全リスナーに言い聞かせるかのように放つ。この曲では、自身の進化を昆虫の変態に例えているわけだが、そこにキッド・カディのエモーショナルなラップでもって、カーティと連帯しつつ、何者にも文句を言わせない圧倒的な進化を誓う全能感が乗っかるのが熱い。
フューチャーとの“Teen X”のキュートなテクノ・ポップ調のトラックの上で弾むように戯れる掛け合いの気持ち良さ、ボン・イヴェールの“iMi”がサンプリングされた“F33l Lik3 Dyin”の神聖さを感じる美しいメロディを刻むラップ等、大きな進化を遂げている。(小松香里)
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