ヒゲダンについて語る際にいつも触れたくなるのが、「高度な技法をキャッチーな響きへと昇華している」という点だ。ブラックミュージック的な要素を濃密に取り入れつつ、パンク、ハードロック、J-POP、吹奏楽など、メンバーたちの音楽遍歴もさり気なく融合させて極上のポップスを構築し続けているからこそ、彼らは新鮮かつ猛烈に魅力的なバンドとして、驚異的な速度で幅広い層に支持されるようになったのだと思う。そして、今回の新曲“Cry Baby”も凄まじい。摩訶不思議な転調を繰り返しながらミステリアスなムードを渦巻かせた末に、爽快極まりないメロディへと突き抜けていく様は、前衛的と言っても過言ではないのだが、紛れもなく超一級のポップスとして仕上がっている。TVアニメ『東京リベンジャーズ』のために書き下ろされたそうだが、同作の主人公が何度ものタイムリープを経て成長していく姿は、転調の連続を経て清々しいクライマックスへと辿り着くこの曲のイメージと鮮やかに重なる。歌詞だけでなく、サウンドの点でもオープニング主題歌として完璧なのだ。ヒゲダン、やっぱりすごい。（田中大）

『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より